2019年6月23日(日)に、「はじめての金融市場」と題し、金融市場に関するイベントを開催しました。

講師は、三菱UFJ銀行で現役の為替アナリストとして活躍されている石丸伸二さんです。
(追記:2020年8月より、広島県安芸高田市の市長として活躍されています)
広島県安芸高田市吉田町生まれ。安芸高田市立吉田小学校、安芸高田市立吉田中学校、広島県立祇園北高等学校、京都大学経済学部卒業。2006年、三菱UFJ銀行に就職。2014年、分析・予測の専門家(アナリスト)の初代ニューヨーク駐在として赴任。現在も現役の為替アナリストとして活躍中。
今回のイベントでは、金融市場やマクロ経済に関して実務経験を基に解説して頂きました。参加者からは
・専門家の方の生の声を聞けて非常に勉強になった
・金融/経済について体系的に学べて良かった!
・今後の日本経済の展望が聞けてためになった
などといった感想があり、非常に充実した時間となりました。
- 世界の枠組み: 実体経済(景気と物価)と金融市場(株式、債券、為替)は互いに影響し、経済政策も介在する。金融市場では銀行は登場しないが、経済仲介機能を使う。
- ドル円の動き: 通貨取引で円のシェアが高く、特に「ドル円」の動きは世界経済を理解する上で重要。
- 利下げと景気: 利下げにより金融機関は低い金利で資金調達しやすくなり、企業と個人への貸出金利が低下。これが経済活動を活発化し、物価を上昇させ、景気を良くするスパイラルを生む。
- 中央銀行の役割: 中央銀行は物価の安定と経済成長を支えるために介入し、合理的な取引を可能にする。
- 経済の構成要素: 経済を景気と物価に分解し、GDPを用いて国の状態を評価。幸福度とGDPの関係も考察。
- 日本の株式市場の見通し: 長期的には日本株式市場はお勧めせず、理由は経済の状態と金融政策による影響。
- 今後の行動: 自分が生きたいという意思が大切で、生涯現役を目指すことと、具体的な行動を示唆。
目次
世界の枠組み
まずは、世界がどのような枠組みで動いているかというお話です。
実体経済と金融市場は相互に影響しあい、時に経済政策が介在する
実体経済とは景気・物価のこと、金融市場とは株式・債券・為替のことです。そこに財政や金融といった経済政策が介在します。
ちなみに金融市場には登場人物として「銀行」が出てきません。なぜかというと、金融市場とは参加者が自由な意思に基づいて自由に取引ができる場所だからです。銀行というのは預けたい人、融資したい人がいますが、両者は銀行という金融仲介機能を使って取引を行います。つまりそこでは自由な取引はできません。これが、「銀行」が金融市場には出てこない理由です。
世界経済の流れを知るにはドル円の動きを見よ
次に、世界の通貨別の取引シェアについてのお話がありました。意外にも「円」の通貨別取引のシェア率はドル、ユーロについで第3位です。そして、通貨ペア別の取引シェアは「ドル円」が第2位でした。
したがって、「ドル円」の動きを知っているということは、世界経済の動きを知っていると言っても過言ではありません。
利下げが起きると景気が良くなる
皆さんも「風が吹けば桶屋が儲かる」という言葉を聞いたことがあると思います。
では「利下げが起きると景気が良くなる」このロジックはご存知ですか?
利下げが起きると金融機関は、低い金利で資金を調達できるため、企業や個人への貸出においても、金利を引き下げることができるようになります。
そうなると、企業は、従業員への給料の支払いなどの運転資金や工場や店舗建設など設備投資に必要なお金を調達し易くなります。同様に、個人も、住宅の購入などの資金を借り易くなります。
結果的に、
①経済活動が活発となり、景気を上向かせる方向に作用する
②物価に押し上げ圧力が働く
③個人消費も増えてお金の回りが良くなり景気が良くなる
という正のスパイラルが生まれます。
・実体経済と金融市場は相互に影響し時に経済政策が介在
・為替市場の主役はドル
・金利政策は金利をコントロールすることで実体経済へ間接的に作用する
・財政政策は実体経済へ直接的に、金融市場へ間接的に影響を及ぼす
「実体経済が悪くなると金融市場にどのような影響を及ぼすか」、「景気を回復させるために政府はどのような経済政策を打つのか」など、経済ニュースに出てくるもののよく理解できていないことに関して、細かく解説して頂きました。
中央銀行とは?
中央銀行とは日本でいう日本銀行のことであり、物価の安定と持続的な経済成長を支える役割を担っています。
経済成長には、合理的な取引が必要不可欠です。その理由は、例えば今日100円で買えたものが、明日いきなり10000万円になったらどうでしょうか?物価が不安定だと、合理的な取引はできませんよね?
つまり、物価の安定を図り、合理的な取引を行うために中央銀行が介入しています。その結果持続的な経済成長が望めるのです。
さらにこのトピックでは、経済の仕組みを勉強していくことで湧いてくる疑問に対して一つ一つ丁寧に教えて頂きました。
今まで読み飛ばしていた新聞の経済欄も、これからは読んでみたい、という参加者も多かったようです!
経済の構成要素について
経済を掘り下げてを景気と物価に分解する考え方や、GDPを用いて国の状態を把握する方法を教えて頂きました。
また幸福度とGDPについての関係についての興味深い解説では、参加者も巻き込んで熱い議論が繰り広げられました。
GDPとは何か?
GDPは国内総生産の略で、ある国で生産されたすべての財貨とサービスの市場価値の合計を示します。これは国の経済活動全体を測定する一つの指標です。GDPは通常、国の経済的な健全性と成長を評価するために使用されます。
幸福度とは何か?
幸福度は主観的な感情や幸福感を測定する指標で、人々の生活の満足度や幸福感を評価します。これは、生活の質、健康、社会的関係、仕事、環境など、さまざまな要因に影響を受けます。
幸福度とGDPの関係
高いGDPを持つ国々が、自動的に幸福であるわけではありません。一般的に言えるのは、GDPが一定の水準に達することで基本的な生活水準が確保され、飢餓や極端な貧困が減少することがあります。しかし、一度一定の生活水準が達した場合、GDPの増加が幸福度に同じように寄与するわけではありません。
幸福度の要因
幸福度は所得だけでなく、さまざまな要因によって影響を受けます。
これらの要因には以下が含まれます。
- 社会的つながりと人間関係
- 健康と安全
- 教育
- 労働条件と仕事への満足度
- 環境への配慮
- 個人の自己評価と心理的幸福感
幸福度とGDPの相関関係
研究によれば、一般的にGDPと幸福度は正の相関関係があります。つまり、国のGDPが高い場合、その国の人々の幸福度も高い傾向があります。しかし、この相関関係は飽和点に達することがあり、GDPが一定の水準に達した後、幸福度への寄与は限定的になるとされています。
その他の学び
他にも、
・GDP(生産)、GDE(支出)、GDI(分配)の全体像
・経済=価格×物価=数量×価格
・日本の幸福度は世界58位。しかしこれは主観も交じる。GDPは主観ではなく、数字で幸福度を計る指標の一つ。
・日本銀行の金融政策と日本経済への影響
・日本の景気って今後どうなるの?
などの説明もありました。
参加者からのQ&A
イベントの最後には、参加者からでた質問についても丁寧に答えてくださいました。
Q. 今後の日本の株式市場の見通しは?
長期的に見て、日本株はお薦めしないとのことでした。その理由は、
1. 日本経済があまりよくない
2. 金融緩和の弊害。金融政策として、株を買っているのは日本だけ。自分が動けば大暴落するので、そのリスクを内包している。筆頭株主が日本(国)という状況では、企業のガバナンスも効きづらい。
とのことでした。これは、日本の経済が過去数十年にわたり成長に課題を抱えており、成長率が低いことからも納得の理由でした。
Q. これからの私たちは、何をすべきでしょうか?
まずは「自分が生きたい」という意思が大事とのことでした。
これには、お?と思う回答が。石丸さんは生涯現役を公言しており、自分で生き抜く力を身に付ける重要性を説いてくれました。これは…深いです。
ちなみに石丸さんなら「○○する」とのことでした(諸事情により非公開 笑)
本当はここを詳細に書きたかったのですが、機会があればぜひまた石丸さんをご招待して皆さんにも聞いていただきたいです。
クロージング

最後にお金研究会から次回のイベントについてお知らせさせていただきました。
次回のイベントは7/5(金)の19時から開催予定です!
勉強会終了後は懇親会という事で近くの居酒屋へ移動しましたが、そこでも石丸さんへの質問は絶えませんでした。最後まで真摯に皆さんの疑問にお答え頂きありがとうございました!
今後も石丸さんと一緒にお金や金融について語る場を設けて行きますので、ご期待ください!!
Roots Lab.では定期的にイベントを開催しています。興味のあるテーマがあればぜひご参加ください!
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